重機の日常点検とは『何をすればいいの?何のためにするの?』

重機とは

重機の代表格である油圧ショベル。その日常点検項目は少なくない。

自動車でも大した日常点検しないでも大丈夫なんだからショベルでそんな日常点検する意味ないんじゃないの?と思ってませんか?

実は、自家用車と同じ感覚で比較してしまうと思わぬしっぺ返しをくらいます。

なぜなら油圧ショベルは多くが自家用車ではなく企業の利益を出すための稼ぎ頭の重要な設備なはずだからです。大事なエースがケガをしてしまったらチームはどうなるでしょう?
想像してみてください。エースのいないチームは攻撃力が大幅減です。それだけではありません、治療費もかかるし、エースを運転していたパイロットはどうすればいいでしょう?そう考えると日々のメンテナンスは大事だと思いませんか?油圧ショベルはアマチュア選手ではありません。お金を稼ぐプロ選手なのです。当然日々の体のメンテナンスはパフォーマンスの維持のために不可欠なものなのです。

私は大手重機メーカーで20年間油圧ショベルの設計に従事してきました。またたくさん現場に出向きお客様との会話の中で求めるニーズについても理解しており、お客様の立場とメーカー側の両視点から見ることができます。

この記事では、油圧ショベルの日常メンテナンスとその目的、怠った時の影響について知ることができます。

この記事を読むと、多くの日常点検項目の大事さを理解することができ、さらに気を使うべき点検項目についても知ることができ日々の日常点検の効率が上がり、さらに惰性でおこなう点検ではない真に効果のある点検を実施することができるようになります。

結論はこの記事の日常点検チェックリストと点検項目ごとの心得通りに点検実施することで油圧ショベルのパフォーマンスの維持と修理費の低減をすることができます。

日常点検

なんで日常点検が必要なの

油圧ショベルは自家用のアマチュア選手ではなく、仕事としてお金を稼ぐプロ選手です。
日々の体のメンテナンスは成績に直結するパフォーマンス維持には必須です。

日常点検をすることで、

 あれ?モニターのランプ点灯してるんだけど、とか

 油にじんでるじゃん!とか

 少し音が違うんだけどとか

何気にいつもと違うことを発見することができます。

早期に異常を発見することでメンテナンス費用を抑えることができるのはもちろんのこと、ショベルの仕事パフォーマンスへの影響を防ぐこともできるんです。

安くない機械ですので、本来のパフォーマンスをしっかり発揮して仕事してもらわないと困りますよね。


そんなパフォーマンス維持のために必要なメンテナンスメニューとその心得をチェックリストとして用意しました。

点検不良による故障事例

日常点検をしていれば防げたような故障事例をいくつか挙げてみました↓

エンジン
  ・エンジンオイル不足による潤滑不良による故障。
  ・冷却水不足によるオーバーヒート。
  ・ラジエータ目詰まりによる冷却効率低下によるオーバーヒート。
  ・エアクリーナ目詰まりによるパワー低下。
  ・異音発生からエンジン破損。

ポンプ
  ・異音発生からポンプの内部破損。

配管
  ・配管損傷によるホースの破裂。

旋回装置
  ・潤滑油の不足による内部破損。

シリンダ
  ・油漏れによるパワー不足。
  ・油漏れによるフロントの沈下。

トラック
  ・履帯張り不足による脱輪
  ・ローラー油漏れにより発熱、発煙

取付ボルト
  ・取付ボルト緩みによる機器の破損、亀裂

日常点検項目

日常点検項目として下記のチェックリストを用意しました。

点検内容チェック
エンジン エンジンオイル量
エンジンオイル汚れ
エンジンオイルもれ
冷却水の量
冷却水のもれ
燃料のもれ
ファンベルトの張り
配管の損傷
燃料タンク、フィルタの水抜き
ラジエータ、作動油クーラーの目詰まり    
取り付けボルトの緩み、脱落
異音、排気の色
エアクリーナエレメントの点検、清掃
タンク作動油の油量
作動油タンク内の汚れ、異物
燃料タンク内の汚れ、異物
作動油、燃料漏れ
ポンプ作動油の漏れ
異音
油圧配管作動油の漏れ
配管の損傷
足回り履帯の張り具合
履帯の摩耗、損傷
上ローラー、下ローラーの油漏れ、摩耗
フロントアイドラーの油漏れ、摩耗
走行装置の油漏れ
取り付けボルトの緩み、脱落
作業装置シリンダーの油漏れ、損傷
配管の油漏れ、損傷
バケットの摩耗、損傷
ピンの抜け止め、ストッパボルトの損傷
取り付けボルトの緩み、脱落
運転室モニターランプの作動状態
バッテリーの充電状態
作業灯の作動状態
各メーターの作動状態
警報器の作動状態
給脂フロント各部位への給脂

<注意>

日常点検は始業前の決まった時間に実施することをおすすめします。
理由はいつもと違う条件で点検してしまうと普段との違いに気づきにくくなるからです。

あと、点検は水平で平らな場所に車体を置いた状態で点検することが必要です。
理由はオイルや水の量が正確に計測できないためです。
特に作動油の量については各メーカーで基準油量を計測するための姿勢が異なるのも注意点です。

また、オイルの量については機械が動いた後から一定時間をおかないと正確な量が把握できません。例えばエンジンオイルですと仕事終わりにみて少ないと思っても時間をおくと増えていることがあります。これはエンジン稼働によりオイルがエンジン内を循環し、停止後に時間経過と共に重力でオイルパンに戻ってくるためです。

コマツさんの日常点検の参考動画がありましたので掲載しておきます↓↓

コマツ日本チャンネル

まとめ

結論はこの記事の日常点検チェックリストと点検項目ごとの心得通りに点検実施することで油圧ショベルのパフォーマンスの維持と修理費の低減をすることができます。

日々のメンテナンスに加え定期的に全身検査することにより普段気づかない体の異常がないかの確認も大事ですね。
皆さんも日々の健康管理の他に年に一度は定期検診受けますよね。
油圧ショベルも同じです。
これからも皆さんの愛車を大事にしてあげてください。

<参考>
最近では点検表のペーパーレス化も進んできているようですねぇ。

PR TIMES

本ブログでは重機の代表格である油圧ショベルの基本的な仕組みについて詳しく掲載しているので興味があればご覧になってください↓↓↓

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