重機の代表格である油圧ショベル。
大きいし沢山の部品でできていて色々な動きができる機械。
そんな機械の動く仕組みなんて難しくて全然理解できないんじゃないかと思ってませんか?
今回はそんな重機の旋回動作の仕組みを分かりやすく説明していきます。
私は大手重機メーカーで20年間油圧ショベルの設計に従事してきました。どんな部品を使っているか、どんな仕組みなのかを理解しております。
この記事では油圧ショベルの設計者が油圧ショベルの旋回動作の仕組みをわかりやすく説明します。
この記事を読むと油圧ショベルの旋回動作の仕組みを簡単に理解できて他の人にも説明してあげることができちゃいます。
結論は、構成として上部旋回体、下部走行体、作業装置に大別でき、下部走行体と上部旋回体とが旋回ベアリングを介して連結された360°回転可能な構造で、エンジン動力を油圧ポンプで油圧パワーに変換し、それを旋回モーターへ伝達して減速機を介して力を増幅させて動作させます。
旋回動作とは
●回転して向きを変えること
油圧ショベルの旋回は油圧の力をモーターに伝え機械を回転する力に変換します。
その過程で減速させたり、油の量を調整することはあっても基本はいたってシンプルです。
※近年ではハイブリッドショベルも少しずつ増えてきておりますが、本記事では従来式の油圧ショベルについて記載します。
旋回するための仕組み
全体構成
●上部旋回体が360°回転可能
ではまず下記の油圧ショベルの説明図をご覧ください。
大きく分けると上部旋回体、下部走行体、作業装置の3つに大別され、下部走行体と上部旋回体とが旋回ベアリングを介して360°旋回可能な構造になっています。
この中で旋回動作に参加する主な部品は油圧ポンプ、旋回ベアリング、旋回モータ、メインコントロールバルブ、旋回ギヤです。
旋回動作とは、供給動力を伝達し、上部旋回体を回転させることです。
ここで疑問となるのは、
- 動力源は?
- 力の伝達方法は?
- 速度や力の制御方法は?
では上記3つの問いに対して以降で説明していきます。
※モデルによっては旋回が360°ではなく180°しか回転できない構造のものもありますが、本記事では大多数を占める360°回転方式について記載しています。
動力源
油圧ショベルの力の源は”油圧”です
エンジンに連結された油圧ポンプが発生させる油の力”油圧”が旋回動作の動力源になります。この油圧を利用して油圧モータを回転させます。
力の伝達方法
力の伝達方法には2種類あります。油圧と機械式です。
油圧による力の伝達
油圧というのはとても便利で、油圧ポンプから油圧モータまで遠く離れていても配管を接続するだけで力の伝達ができるのは油圧の利点です。
油圧ポンプで発生させた高圧の油を油圧ホースやパイプを介して送り、旋回装置に取り付けられている油圧モータを回転させます。
機械式による力の伝達
機械式の動力伝達方法といっても色々ありますが、油圧ショベルの旋回システムでいう機械式の伝達方式としては主に歯車(ギヤ)による方式です。
供給された油圧により油圧モータが回転しますが、その回転力を旋回装置内の減速機へ伝達し、更に減速機から旋回ベアリングへと歯車により伝達されていきます。
更にここでは油圧モーターの回転を減速機を通じて減速し、力を増幅させています。
また、旋回装置には停車用のブレーキが備わっております。
ブレーキも機械式でディスクブレーキとなっています。
オペレーターが旋回の操作をした時に油圧の力でブレーキを解除し、旋回の操作をやめた時にブレーキ解除の油圧が失われ、バネの力によりブレーキが戻され減速および停車を可能としています。
速度や力の制御方法
以下に速度と力に分けて説明します。
速度の制御方法
旋回の速度を変えるとは、旋回モータの回転数を変えることであり、その為には旋回モータに供給する油の流量を調整する必要がある。
その為には(1)油圧ポンプからの供給する流量を調整する。(2)コントロールバルブで旋回モータへ分ける流量を調整する。という制御をする必要がある。
メーカーやモデルにより油圧システムの方式に違いがあり厳密には違うのだが、基本的にはオペレーターが操作レバーを動かした量に応じて油圧ポンプから供給する油の量が変化し、且つコントロールバルブが旋回モータへ分ける流量も同様に変化する。
回転方向の制御については、オペレーターが操作レバーを操作した方向に応じて、コントロールバルブが旋回モータを右回転する方へ油を流すか左回転する方向へ油を流すのかを切り換える。
力の制御方法
旋回の力を変えるとは、旋回モータが発生させるトルクをかえることである。旋回モータの押しのけ容積は一定であるので、トルクを変える=圧力を変えるということになる。
旋回モータの圧力は負荷に応じて変わる=加わる負荷以上の力は発生しない。これはあなたが100kgのおもりを持ち上げる時に100kg以上の力を出さないことを想像すれば分かると思う。(ただしこれは静的な話であり、加速する時には負荷+加速度分の力が加わることにはなる。これを考慮するとポンプの流量を変化させると力も変化するとも言える。)
旋回の最大の力は旋回モータのリリーフバルブと呼ばれる安全弁の設定圧力で決まっており、その圧力を超えることはない(安全弁が設定圧力を超えた分の圧力を作動油タンクへ逃がすため)。
まとめ
油圧ショベルの旋回システムは、下部走行体と上部旋回体とが旋回ベアリングを介して連結された360°回転可能な構造となっており、オペレーターが操作レバーを操作することにより油圧ポンプからの油圧がコントロールバルブにより旋回モータへ供給され減速機を介して力を増幅し、旋回ギヤを通して下部走行体に力を伝達し、旋回ベアリングで360°回転を可能にしている。
本記事で油圧ショベルの旋回動作の仕組みの大枠が理解できたと思います。これをきっかけに少しでも油圧ショベルに興味をもってもらえれば幸いです。
本ブログでは重機の代表格である油圧ショベルの基本的な仕組みについて詳しく掲載しているので興味があればご覧になってください↓↓↓
旋回性能の計算についての説明はこちら↓↓↓
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